活字の森 思考の迷路

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【読書】人生の扉を開く最強のマジック

今回の読書感想はこちら。

ジェームズ・ドゥティ著「スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック」。どうしてもスタンフォード大学の権威を借りたかったのだと思うが、タイトル長すぎだろ(笑)。

 

 

この本は著者のジェームズ・ドゥティの半生を綴った実話だというが、そのことにあまりにドラマチックすぎて気づかなかったというか、満員電車の中で漫然と読んでいたので最後の方で気づいて驚いた。

アメリカの片田舎の街の貧困家庭で育ったジム(ジェームズ・ドゥティ)は12歳のときに訪ねたマジックショップでルースという女性に出会う。彼の不幸な境遇を見抜いたのか、ルースは

「この町には6週間しかいないけれど、毎日会いにきてくれたらマジックを教えてあげる。店じゃ買えないような、何でも欲しいものを出せるマジックよ。本物のね」

と言ってジムに毎日会いに来るよう誘い、人生を変えるマジックを伝授した。手品ではなく魔法の方のマジックだ。それはいまでいうマインドフルネスで、ルースは呼吸法や集中方法などを丁寧に教え、どん底の生活から這い上がりたかったジムも真剣に学び、練習し、自分のものとした。このマインドフルネスはただ単に頭を空っぽにしたりリラックスするためのものではなく、望む現実を引き寄せるための方法でもあった。この方法をものにしたジムはドゥティ家の家庭環境では不可能だと誰もが思っていた大学進学を果たし、当時からの夢であった医師になった。どんな困難が襲ってきてもジムはルースのマジックで切り抜けた。

しかし、外科医となりお金も成功も手にしたジムは当時ルースから言われた

「わたしが教えたマジックには威力があるの。いい方に使えばいいけれど、準備のできていない人がその力を使うと誰かを傷つけたり、痛みを引き起こしたりするの」

という言葉を忘れてしまい、多くのものを無くしたくさん傷ついた。けれどもその過ちから学んだジムはスタンフォード大学に共感と利他精神研究教育センターを設立。それは「脳と心臓が強調すると、人はより健康になり、他人に対して自然に愛と親切と気配りを表現するようになる」と自分が直感的に知ったことを科学的に裏付けたいという思いからだった。まだセンターの設立準備中、ジムの考え方に共感したダライ・ラマはこのセンターに献金している。

 

私は怠け者なのでこの本で紹介されているマインドフルネスのテクニックを試したことはないが、ビジュアライゼーションやマインドフルネスが引き寄せの法則に有効なのはよくわかった。紹介されている方法でマインドフルネスを身につけるのは大変そうだけれど、自分もYouTubeの誘導瞑想などを使ってマインドフルネスを続けてみようかなと思った。

マインドフルネスがいいなと思った以上にこの本は物語も優れていて、かなり読み応えがあった。それはジムと自分の境遇に似たところがあったせいだとも思う。ジムの両親も低学歴で貧しく行動に問題を抱えていたが、うちの親もそうだった。ジムは周囲に大学進学した人がいなかったので進学に関わるいろいろなことを知らずにありとあらゆることで苦労していたが、自分もそうだった。奨学金のことなどもっと早く知っていればとか、金銭以外にも手続きや学部への認識など(例えば経済学部は文系だが数学ができないと軽く死ねるなど)大学進学経験者が身近にいないとかなり進学のハードルが高い。問題家庭の子どもが進学するなどと担任の先生も考えてもいないからどうしてもフォローも甘くなる。両親が大学を出ていなくても子どもの進路に興味があれば一緒にいろいろ調べてくれたり相談先を探してくれたりもしただろうが、子どもの進路に興味がなかったり子どもの進路のことなど自分の人生に手一杯で考えられない親の元に生まれると大学進学がかなり手探り状態になる。うちの親も私がどの大学を受験したとかどの学部を受験したとかよく知らなかったと思う。高校だけは近所に自慢できるところに行かせたかったらしく「市内四校」といわれる進学校に行かせたかがっていたが、その高校にさえ行ってくれればあとは好きにしろということらしく金も出さなかったが口も出さなかった。

また、ジムの父親がとんでもないアル中なのだが、その醜態も自分の親の姿と重なるところがあって電車の中で読んでいたのになんだか泣けた。私は子どもの頃、周りにどんなに大人がいても誰も助けてくれないと学んだものだが、ジムはルースという女性に出会えて本当によかった、本当によかったねと心から思えた。ルースも決して幸福な人ではなかったが自分もある人に救われたことからその恩返しの気持ちでジムにマジックを教えたということのようだが、自分もそういう形で誰かに貢献することはできるだろうかと少し考えた。善意を次の人に回していくペイ・フォワードだ。そういえば映画「ペイ・フォワード 可能性の王国」も善意を他人に回すという案を思いついたトレバー少年も家庭に問題があり両親がアル中だった。

 

ということでこの本はマインドフルネスをやってみたい人にも、どうしても叶えたい願いがある人にも、心温まる成功物語を読みたい方にもおすすめ。