活字の森 思考の迷路

読んだ本や考えたことなど徒然なるままに書いていきます

【読書】行こう!野ウサギ

 

先日、高速音読をアルト・パーシリンナ「行こう!野ウサギ」という本で始めたと書いた。

そしてそのときに読後感が非常によくて「買ってよかったと思った」とも書いた。

そう。この本を読んだときの私は世界で頑張る日本人の番組を担当していたこともあって海外にすごく興味があり、特にフィンランドにはとてもとても憧れていた。

そして何よりいまの10倍くらいは忙しくて恐ろしく疲れていた。

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海外のことに触れることも少なくなり、フィンランドへの憧れも昔よりも随分薄れ、仕事がなくて困っているいまこの本を読んだ感想は昔とは随分違う。

この本は「大人の童話」というよりも「男の童話」ということに気がついた。私もそれだけ大人になったのだ。

主人公の雑誌記者ヴァタネンはカメラマンと取材に行った帰りの車でとても険悪な状態にいた。イライラしながら運転していたカメラマンが誤って子どもの野ウサギをはねてしまった。ウサギを心配したヴァタネンは車を降りて野ウサギを追いかけて保護し、そのまま車へは戻らず野ウサギを連れて放浪の旅に出る。

不本意な仕事と冷め切った仲の妻と離れたヴァタネンは山火事を消火する仕事に就いたり、山小屋を修理する仕事をしながらフィンランド中を放浪する。途中で美しい娘と一夜の恋に落ちたり、最後には泥酔して記憶がない間に美しく有能な弁護士と婚約していたり……とまあ男性が読むと心躍る物語だ。途中で仕事もしているし、第一、船を売ったためにできた大金で旅の資金にも困らない。主人公に金の心配がないことも大人の童話を心から楽しむためには重要な要素だと思う。

しかし、長年社会人として働いてくる中でリビドー丸出しの多くの男性たちを生暖かい目で見守ってきた結果、この物語を手放しで「面白かった!」とは言えない自分になっていた。ほんと、国は違っても結局は美しい娘とあんなことやこんなこと……か、と。まあ、全体的には面白くはあったんだけどね。

私が特に面白いなと思ったのは「大統領のとんでもない秘密」という章だった。

ヴァタネンが途中で出会ったハンニカイネンという元警察署長の老人はフィンランドのケッコネン大統領(1956年〜1981年までフィンランド共和国の大統領を務めた実在の人物)の重大な秘密を突き止めていた。それは1968年か遅くとも1968年の前半に別人と取って代わっているというものだ。写真から頭蓋骨の形や身長を比較し、別人であるという結論に至った。作者のアルト・パーシリンナ自身も同じように考えていたのかどうかは知らないが、現代でもある国の大統領に別人説が出ていたり、ある国の最高指導者に影武者説が出ていたりする。私もそんな噂のある写真を見て「うわ〜本当だ耳の形が違う〜w」なんて楽しんだりしているのでパーシリンナやフィンランド国民も同じように楽しんでいたのかもしれない。知らんけど。

男の童話かよ、というがっかり感はあったものの、この本を読んで大人の童話というものには自分が思っているよりももっとずっと人びとを楽しませる可能性があるのだということを感じた。

 

また、この本を高速音読のテキストとして使った感想の方はといえば、難しすぎず簡単すぎず丁度よかった。3日ほどで読めたのでいいチョイスだったと思う。ただし、登場人物や地名が見慣れないカタカナだったので、目でも追いきれず舌も回らずその点は苦労した。その分ほどよく頬や首の筋肉が刺激されてたるんだ顔も若返りそう、なんて淡い期待も抱いている。

また、高速音読で読書をすると脳が疲れていると文字の上を目だけがすべっていく現象が減って本の内容が頭の中によく残るような気がする。

がっついて読むので普通に読書をするよりも早く読めるのも嬉しい。この分だと今年は読書の量が増えるかもしれない。

 

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